小林エリカさんの『トリニティ!トリニティ!!トリニティ!!!』。
トリニティ…、あれ、最近どこかで出会った言葉だ。
ああ、さとうみつろうさんの『悪魔とのおしゃべり』に出てきた言葉だ。
意味は確か、三位一体…
そんな軽い興味から手に取った。
久しぶりの小説。半日で読み終えてしまった。
読み終わった感想は、率直に言うと「なんだこれ」。疾走感がある展開にぐいぐい引き込まれ、一気に読み進めてしまったが、私には消化できなかった。
本の紹介文には
ーーーオリンピックに湧く夏、「見えざるもの」の怒りを背負った者たちが立ち上がる。
ノンストップ近未来長編!ーーー
と書かれていたけれど…ポップなコピーとは別の、もっと不穏な、眩暈を感じるような混乱が残った。
その晩、夢を見た。
「見えざるものの声を聞け。」小説のキーワードが繰り返し響いて、夢と現の狭間で妙に冷静に納得する自分がいた。
見えざるものたち…それは、遠い先祖かもしれない。あの時の彼氏と結婚していたら、生まれてくるはずだった子供かもしれない。あの日違う決断をしていたら、存在したもう1人の自分かもしれない…無数の過去や未来や可能性を背負ったまま、いや背負っているからこそ、生かされている今の自分。
単体の個人として能動的に生きているつもりだった自分が薄れていく。拠り所を失くして、足元から崩れてしまうような感覚に戸惑う。けれど、あらゆるものたちと既に繋がっていたんだという気づきが、心強くもある。
「自分」の範囲が、体の大きさを超えて広がってゆく不思議な感覚。
そんな認識が繰り返し浮かぶ不思議な夢だった。
朝になっても、その感覚は消えることなく残っていた。
そのせいか、昨晩は理解不能だった本の内容が今朝は把握できる気がする。
それが、作者がこの本を通して訴えたかった事なのかどうかは自信がない。
けれど、見えざるものたちを引き連れて、見えざるものたちごと生きていく。今の自分にできるのは、それしかないような気がしている。